老朽化対策を議論していない管理組合は66%
|「まだ大丈夫」が一番危ない
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マンションの老朽化対策について、議論を行っていない管理組合は66.1%。方向性まで出せた組合は13.3%にとどまります。国土交通省の令和5年度マンション総合調査をもとに、建替えか長寿命化かを考える前に、管理組合がいま準備しておくべきことを整理します。
調査データ:議論している組合は4分の1
国土交通省の令和5年度マンション総合調査(2023年10月〜2024年1月実施、管理組合1,589件が回答)では、 マンションの老朽化問題への対策について、管理組合で議論したかどうかを尋ねています。
- 議論を行っていない:66.1%
- 議論を行い、建替え・解体等または修繕・改修の方向性が出た:13.3%
- 議論はしたが、方向性が出ていない:12.5%
方向性が出た13.3%の内訳を見ると、ほとんどは修繕・改修の方向で具体的な検討をしたもので、 建替え・解体等の方向で具体的な検討をしたのは、全体の0.4%にすぎません。
区分所有者の意識も同じ方向を向いています。建替えの必要性について尋ねた設問では、 「今のところ建替えは必要ない」が54.3%、「修繕工事又は改修工事さえしっかり実施すれば建替えは必要ない」が36.4%で、 「建替えが必要である」は2.4%でした。
多くのマンションにとって、現実的な選択肢は建替えではなく長寿命化です。 ただし「修繕さえしっかりすれば」という条件は、計画と資金と合意がそろって初めて満たされます。
「まだ大丈夫」が危ない理由
1. 時間とともに合意形成は難しくなる
調査では、完成年次の古いマンションほど、世帯主の年齢が高く、空室や所有者と連絡がつかない住戸が多い傾向が見られました。 1984年以前に完成したマンションでは、世帯主の55.9%が70歳以上です。 所在不明・連絡先不通の住戸があるマンションの割合も、完成年次が古いほど高くなっています。
大きな修繕や改修には、区分所有者の合意が必要です。 建物が古くなってから議論を始めると、そのときには話し合いに参加できる人そのものが減っているおそれがあります。 議論は、建物にも住人にも余力があるうちに始めるほうが進めやすいのです。
2. 耐震性が確認できていない建物が多い
旧耐震基準で建てられたマンション(304件)のうち、耐震診断を実施したのは31.6%で、 64.1%は診断をしていませんでした。 診断を実施した96件の結果は、「耐震性があると判断された」が54.2%、「さらに詳細な診断が必要」が20.8%、 「耐震性がないと判断された」が25.0%です。
区分所有者の側でも、耐震性について何らかの不安があると答えた人は42.7%いました。 そのうち「耐震性が確保されているかわからないので不安だ」は全体の8.7%です。 分からないことが不安を生むのであれば、診断はそれ自体が合意形成の材料になります。
3. 改修の選択肢を検討する機会がない
長寿命化には、壊れたところを直す修繕だけでなく、建物の性能を上げる改修も含まれます。 しかし、省エネ改修工事を実施したことがある管理組合は27.9%で、その内容は「照明器具のLED化」が94.6%とほとんどでした。 「サッシの省エネ化」は8.6%にとどまります。 また、省エネ改修を実施した経験のない管理組合のうち56.4%は、実施を「検討したことはない」と答えています。 バリアフリー改修工事を実施したことがある管理組合も19.5%でした。
住人の高齢化が進むなかで、手すりやスロープの設置、断熱性の向上は、住み続けられるマンションにするための投資でもあります。 議論の場がなければ、こうした選択肢は検討の俎上にすら載りません。
理事会だけで老朽化対策を議論するのは負担が大きいものです。 調査では、専門委員会を設置している管理組合のうち86.7%が「大規模修繕や長期修繕計画に関する委員会」を置いていました。 一方で、専門委員会を設置していない管理組合は52.5%あります。 任期に縛られない委員会を設けることで、長い時間のかかる検討を続けやすくなります。
議論を始めるために準備すること
「建替えか、長寿命化か」をいきなり議論する必要はありません。 まずは、判断の材料をそろえるところから始めます。
- 建物の基礎情報を整理する:竣工年、構造、階数、戸数、過去の図面など、議論の前提になる情報を一か所にまとめます。
- 修繕の履歴を記録する:いつ、どこを、いくらで直したのかが分かれば、建物の状態と今後の必要額を見積もりやすくなります。
- 長期修繕計画を30年以上の期間で持つ:調査では計画期間30年以上の管理組合が72.7%まで増えました。長い期間で見れば、将来いつ大きな支出が来るのかが分かります。
- 必要に応じて診断を受ける:旧耐震のマンションであれば耐震診断、そうでなくても劣化診断は、議論の出発点になります。
- 区分所有者の意向を聞く:何年住み続けたいか、改修にどの程度の負担なら許容できるかを、アンケートなどで把握します。
長期修繕計画の作り方については、 国土交通省ガイドラインに沿った手順をまとめた記事もあわせてご覧ください。
マンション管理ポータルでできること
マンション管理ポータルでは、国土交通省の「修繕計画標準様式」に準拠した形で、 マンションの基礎情報と長期修繕計画を管理できます。 計画を作成したあとは、修繕の実績を記録していくことで、計画と実績の差を収支グラフで確認できます。
上の準備でいえば、1〜3つ目の情報を一か所にそろえられます。 計画は試作版をいくつも作成できるため、「改修を前倒しした場合」「省エネ改修を加えた場合」といった複数の案を比べながら議論を進められます。
まとめ
令和5年度の調査では、老朽化対策を議論していない管理組合が66.1%ありました。 建替えを必要と考える区分所有者は少数で、多くのマンションにとって現実的な道は長寿命化です。 ただ、その道を選ぶためにも、耐震性の確認、修繕の履歴、長期の計画、住人の意向といった材料が必要です。
住人が高齢になり、連絡のつかない住戸が増えてからでは、話し合いそのものが難しくなります。 「まだ大丈夫」と思える今こそ、議論を始めるのに最も適した時期です。
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国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」
本記事の数値は同調査の管理組合向け調査・区分所有者向け調査の結果に基づきます。 耐震診断の結果など回答数が少ない項目は、傾向を示す参考値としてご覧ください。 準備の手順に関する記述は、調査結果をふまえた筆者の見解です。