修繕積立金は計画どおり貯まっているか
|3割超のマンションが積立不足

公開日:

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、長期修繕計画に対して修繕積立金が不足しているマンションが36.6%ありました。さらに約4分の1は、計画と比べて足りているのかどうか自体が分かっていません。調査データをもとに、積立金の「計画と実績のズレ」を点検する方法を整理します。

調査データ:3割超が「計画より不足」

国土交通省は、おおむね5年ごとに「マンション総合調査」を実施しています。 最新の令和5年度調査(2023年10月〜2024年1月実施、管理組合1,589件が回答)では、 長期修繕計画で想定している積立額と、実際の修繕積立金の積立額を比べる設問がありました。結果は次のとおりです。

不足しているマンションが3割を超えていることにも目が行きますが、 筆者がより気になるのは最後の「不明」の23.5%です。 計画があるのに、いまの積立額がその計画に対して足りているのかどうか、管理組合として把握できていない。 約4分の1のマンションがこの状態にあります。

積立金の額そのものは上がっている

一方で、積立金の額そのものは年々上がっています。 月・戸あたりの修繕積立金の平均は、平成30年度の11,243円から、令和5年度は13,054円になりました。 また、積立金の額を「長期修繕計画で算出された必要額に基づき決めた」管理組合は78.4%で、前回の72.5%から増えています。

つまり、多くの管理組合は計画に基づいて積立金を決め、実際に額も引き上げています。 それでも3割超が計画に追いついていない。この差はどこから来るのでしょうか。

ズレが生まれる3つの理由

1. 段階増額積立方式の「予定された値上げ」が実行されない

修繕積立金の積み立て方には、当初から一定額を積み立てる均等積立方式と、 当初は低く抑えて段階的に引き上げる段階増額積立方式があります。 令和5年度調査では、均等積立方式が40.5%、段階増額積立方式が47.1%でした。

注目したいのは完成年次別の内訳です。1984年以前に完成したマンションでは段階増額積立方式は20.7%ですが、 2015年以降に完成したマンションでは81.2%に達します。 新しいマンションほど、将来の値上げを前提にした計画になっているということです。 実際、2015年以降に完成したマンションの積立金の平均(11,405円)は、全体の平均を下回っています。

段階増額積立方式そのものが悪いわけではありません。 ただ、計画上の「値上げ予定」は、総会で決議されて初めて実行されます。 値上げの議案が見送られたり、引き上げ幅が縮められたりすれば、その分だけ計画との差が開きます。

2. 工事費の上昇が計画に反映されていない

長期修繕計画の工事費は、作成時点の単価で見積もられています。 資材価格や人件費が上がれば、同じ工事でも必要な金額は増えます。 計画を見直さずにいると、「計画どおり積み立てているのに、実際の工事には足りない」という状態が生まれます。 なお、長期修繕計画を「5年ごとを目安に定期的に見直している」管理組合は63.2%でした。

3. 実績を記録していないので、ズレに気づけない

「不明」が23.5%あることは、この3つ目の理由を示していると筆者は考えています。 計画を作ること、積立金を徴収することは、どの管理組合でも行われています。 しかし、計画上の残高と実際の残高を並べて確認する作業は、誰かが意識して行わない限り発生しません。 そして、気づかないズレは、次の大規模修繕の直前に一気に表面化します。

区分所有者も同じ課題を感じている
区分所有者向けの調査で「管理に関して取り組むべき課題」を尋ねたところ、1位は「修繕積立金の積立金額の見直し」(36.2%)、 2位は「長期修繕計画の作成又は見直し」(33.0%)でした。 管理組合向けの調査でも、将来への不安として「修繕積立金の不足」を挙げた組合が39.6%あります。

理事会でできる点検の手順

大がかりな作業は必要ありません。次の4つを、毎年の決算のタイミングで確認するだけでも状況は大きく変わります。

  1. 計画上の残高と実際の残高を並べる:長期修繕計画の収支表から、今年度末の予定残高を拾い、決算の実残高と比べます。
  2. 差の理由を分ける:差が出ていれば、「収入が計画より少ない(値上げ見送り・滞納など)」のか、「支出が計画より多い(工事費の上振れ・計画外の工事)」のかに分けます。
  3. 今後の値上げ予定を確認する:段階増額積立方式の場合、次の引き上げがいつ、いくらの予定なのかを理事会で共有します。
  4. 記録を残して引き継ぐ:確認した結果を、翌年の理事会が見られる形で残します。

2つ目の「差の理由を分ける」が特に重要です。 同じ不足でも、値上げの見送りが原因なのか、工事費の上昇が原因なのかで、打つべき手はまったく違います。 この区別ができていれば、総会で値上げを提案するときにも、根拠をはっきり示せます。 値上げの説明がなぜ住人に届きにくいのかについては、 別の記事で詳しく取り上げています。

マンション管理ポータルでできること

マンション管理ポータルの長期修繕計画機能では、計画を作成したあと、 実績機能で工事実績費用を記録していくことができます。 実績管理画面の収支グラフには、計画の収支に実績が重ねて表示され、計画と実績の差異をいつでも確認できます。

上の手順でいえば、1つ目と2つ目の作業を、決算のたびに資料を集め直すことなく行えるようになります。 計画も実績も管理会社と管理組合で共有されるため、理事が交代しても記録はそのまま残ります。

長期修繕計画・実績管理機能の詳細を見る

まとめ

令和5年度の調査では、修繕積立金が計画に対して不足しているマンションが36.6%、 足りているかどうか分からないマンションが23.5%ありました。 積立金の額は上がっているのに計画に追いつかない背景には、段階増額積立方式の値上げ見送り、工事費の上昇、 そして計画と実績を並べて見る習慣がないことがあります。

まずは、自分のマンションが「不足」「余剰」「不明」のどれに当たるのかを確かめるところから始めてみてください。 「不明」から抜け出すだけでも、次の見直しの議論はずっと具体的になります。

関連記事

出典・参考
国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」
本記事の数値は同調査の管理組合向け調査・区分所有者向け調査の結果に基づきます。 ズレが生まれる理由や点検の手順に関する記述は、調査結果をふまえた筆者の見解です。

« コラム一覧に戻る